ワンダービート、スクランブル!
体内医療救急隊「ホワイトペガサス」が乗り組む「ワンダービート号」は、ミクロのサイズにまで縮小され、体内に侵入する謎の宇宙人の脅威を排除すべく、患者の体内へと出動していくのであった……
「ワンダービートS」は、漫画の巨匠、手塚治虫氏が、監修として携わった、1986年放映のテレビアニメです。
放映当時、「めぞん一刻」などの強力な裏番組があったなどの理由で、視聴率が振るわず、最後の2話短縮、変更、打ち切りとなった不遇な作品です。
また、手塚治虫氏が、テレビアニメに関わった、最後の作品なのですが、手塚氏原作というわけではないためか、手塚作品としても扱われないので、知名度もかなり低いですね。
ただ、この作品、ちょっと地味目な印象は否めませんが、正統派SF的で、温かみのあるヒューマンドラマが魅力的な、とても印象に残る良作です。
その為、35周年を迎えた今でも僅か?ながら熱心なファンの方もいらっしゃるようで…。
今回、この話題、書こうと思ったのも(いずれ取り上げようかとは思ってましたが…)、こちらの記事絡みのツイートを「ワンダービートS」ファンの方が、拾ってくださったのがきっかけです。
この方の二次小説読んでいたら、ワンダービートS熱が再燃!GYAO !の配信を見つけて、久しぶりに一気見しました!いや〜やっぱいい作品です。
そんなどマイナーなアニメを今回は取り上げてみます。
また、この「ワンダービートS」は、自作「INNER NAUTS(インナーノーツ)」のルーツの一つでもあります。このあたりに関しても、語らせてください(^_^;)
ワンダービートS 粗筋
西暦2119年、宇宙探査船「グリーンスリーブス号」が、謎の移動惑星「X23」に遭遇。その惑星が通過した星々で、生命活動が悉く停止しているという状況が判明し、その原因が「X23」にあると考えられた。その死の惑星が、地球へと向かっている。危機を感じた地球政府は、「グリーンスリーブス号」に「X23」破壊命令を下すが、船長スギタイサオは、命令を拒否し、調査着陸を試みて消息を絶つ。その3ヶ月後。
「グリーンスリーブス号」船長の息子、スギタススムは、父親の友人でもある、総合健康科学研究所のドクター・ミヤにスカウトされ、体内医療救急隊「ホワイトペガサス」の養成を受けることになる。厳しいトレーニングを積み、晴れて「ホワイトペガサス」に入隊したススム。時を同じくして、彼の友人が突如、目に原因不明の異変を訴える。
ススムは、「ホワイトペガサス」の一員として、医療救急艇「ワンダービート号」に乗り組み、ミクロ化して、友人の目の中へと飛び込んでゆく。
異変の原因は、謎の宇宙人ヒュー(High Intelligent Unknown Extra-Terra)の人体侵入であり、彼らは、その後、様々な人の身体の器官に潜入を繰り返し、異変を引き起こす。「ホワイトペガサス」は、本来の医療活動から外れ、異変の原因である宇宙人と、彼らの作り出した体内モンスターの駆逐任務にあたるようになる。
やがて、ヒューの正体は、惑星「X23」からやってきた異星人ビジュールと判明。体内侵入の目的は、彼らが地球人の身体の中にあると信じる「生命元素」の探索であった……
体内はまさにインナースペース!医療SFの真骨頂
「ワンダービートS」の最大の魅力は、何と言っても、医学博士らが監修に入った、医学的な考証に基づく人体描写でしょう。
勿論、アニメ化にあたってわかりやすくデフォルメしたり、演出表現もあるとは思いますが、毎回違う器官、部位にビジュールさんが侵入してくれるんで、(しかも、敵、味方それぞれ色々解説付き。ダメ押しでラストに手塚治虫先生出演解説付き!)人体の様々な働きをわかりやすくお勉強できるという優れもの。対象は、小中学生くらいと思われ、難解な知識がなくても、すんなり何が起きているのかわかる描写は、秀逸です。
特に、毎回、ビジュールは最後、撤退するのですが、その後の回復の描写が手書きならではの温かみのある、思わず感嘆してしまうような美しい映像で描かれます。
例えば、異星人のモンスターによって傷付いた耳の中の有毛細胞が、回復音声として流れてくるメンデルスゾーン作曲ヴァイオリンコンチェルト第三楽章に乗せて、黄金に輝きながら蘇ってくる(患者が天才バイオリニストの少女)、回復した瞳の中に、ヒロインの女の子の像が浮かび上がるとか。酸欠状態だった赤血球にまさに血の気が戻ってくるとか。
舞台が、人体ならではの背景演出をしっかり魅せているところが、素晴らしいと思います。
まさに体内は、「神秘なる小宇宙」なんだなぁと実感できることでしょう。
80年代らしいケレン味たっぷりのメカ演出
「ワンダービートS」のもう一つの魅力は、メカアニメ全盛期の80年代らしいメカアクションです。
とはいえ、ぶっちゃけ、デザインとか、演出はやや地味です。なんてったって、活動場所が体内なので、身体を傷つけないようにしながらの制約あるバトルで、派手な武器は殆どありません。
主役機のワンダービート号も、中盤で乗り換えがありますが、初期のワンダービート号は、楕円球体に三枚の翼が付いただけという、マンボウみたいなシンプル過ぎるくらいのデザイン。
けど、これも体内医療活動艇なので、突起部は極力作らない設計なのだろうと納得できます。
そして、活躍を見てると、このちょー地味な船が、一生懸命頑張ってるのが、愛おしくみえてくるんですよね。で、愛着が湧いてきた頃に、衝撃の後継機への乗り換えが!
この頃のメカアニメでは、主役機交代って、結構定番だったと思うんですが、体内医療活動艇らしい宿命が絡む交代劇になっています。(このエピソードは神回だった!ネタは伏せておきます)単に、パワーアップだけでない、設定を活かした良いドラマになっており、ワンダービートファンの間でも屈指のエピソードとなっているようです。
で、この回を境に、作画監督が変わった為か、後半はメカ演出が、グッとカッコよくなりました。新ワンダービート号も、シンプルながらスペースシャトルのような外観に様変わり。前半とのギャップもあって、かなりかっこよく見えます。(いや、実際カッコいいっす)
演出面は、いわゆる80年代アニメ定番の『ワカメ影』とか、チカチカ、カラフルに点滅する計器類、やたらムダの多い?ディテール線の多用とか……まあ、あの頃の定番の、カッコいい要素がだいぶ入ってきました。
前半は、古き良き手塚SF→後半は、80年代メカモノ。視聴率回復のためのテコ入れである事が、はっきりわかりますが、かなりコテコテに盛ったあのケレン味。……好きです(笑)
ちなみに、BGMも耳に残りやすい、聞き心地良く、カッコいい曲も多用していて、これまた語りたいのですが、また別の機会に。
ハートフルな人間ドラマと愛あふれるテーマ、希望に満ちた時代の面影
「ワンダービートS」は、しっかりしたSF世界観をベースに展開されるメカアクションが主軸ではありますが、キャラクター達のドラマも、古き良き昭和……的なところはありますが、思わずほっこりしちゃうようなエピソードが毎回あるのも良いですね。
主人公と、患者となるゲストキャラとの交流。患者さんらは、何故か自分の一番大切な部位に侵入される事が多く(ビジュールの侵入目的から狙われやすいのでしょう)ビジュールの侵入が彼らの悩みだったり、試練などと密接に絡み合ってきます。ホワイトペガサスの活躍で、その脅威が解消されると、抱えていた悩みなどの解決にも繋がって、ハッピーエンドになるわけですが、その展開が、今の時代、何か忘れかけているような、人と人との繋がり、心の交流、みたいなのを思い起こさせてくれるので、疲れた時とか見るのにもってこいだったりします。
主人公のススムくんも父親が地球の裏切り者だと言われ悩みながらも、父親を信じ続け、その想いがビジュールとのコンタクトにつながっていく……これから視聴する方もいるかもしれないので、詳細は避けますが、これって、これまた自分の大好きな「宇宙戦艦ヤマト2199、2202」の一つのテーマにもなっていた、異なる存在との相互理解が、ワンダービートSのテーマの一つでもあったんですね。
それにしても、80年代〜90年代、特にこの80年代中頃は、やっぱり日本の黄金期だったなぁと思います。
こうした娯楽作品であるアニメにも、未来を信じられるような、どこか幸福感があるような作品が多かったような気がしますね。
褒めちぎっちゃいましたが、結構アラもあるし、ツッコミどころは多々あります。ですが、今の先行きの見えない時代にこそ、あの頃の作品は心に響くものがあるのではないでしょうか?
ワンダービートは自作「インナーノーツ」のルーツ?
このサイトは自作「INNER NAUTS (インナーノーツ)」のホームページなので、ちょっとだけ、関連を語らせてください!
自作「INNER NAUTS (インナーノーツ)」の基本構想は、自分が中高生頃出来てまして、当時、夢中になった種々の作品などからも多く、インスパイアされています。
こちらの記事でも触れましたが、中でも「ワンダービートS」の影響は、世界観のベースになっています。
何せ、「インナースペース」って、体内を指す場合もありますからね💦
「ワンダービートS」で、体内なら、さらにその先の世界に行けたら……という発想から精神世界、心の世界が舞台となりました。(そこに、ちょうどタイミング的にエヴァとかFF7とか重なって……大まかな世界観が形成されていったと思います)
本作は、今、必ずしも心の世界だけにとどまらず、いわゆる「あの世」(これも人間の精神活動と関わる世界と考えていますので)全般あつかってますが、当初は、もっぱら人の心を対象にする予定だったはず。
活動拠点となる研究所があって、有能な博士が責任者で、そこから特殊活動艇とそのクルーが事件解決に出動する……このスタイルは、まさに「ワンダービートS」ですね。
ちなみに、キャラクターも一部、似通ってます。例えば、特殊艇の女性キャプテン、影の薄いヒロイン、失踪(自作では他界ですが)した父親、管制ブースのオペレーター達……「ワンダービートS」の知名度が低いのを良いことに、かなりオマージュさせてもらってます💦
知ってる人が見れば、バレバレかもしれませんが、ファンの少ない作品なので、案外それも狙いだったりして。
また、バトル要素はあっても、本来の目的が戦闘ではない、戦争モノでは無いというところもおおよそ踏襲しているつもりです。
「ワンダービートS」は、手塚作品としては、なかなか認知されませんが、そのエッセンスは凝縮されており、自分にとっては、漫画や物語作りのお手本のような作品です。
まとめ
今回は、自作「INNER NAUTS (インナーノーツ)」のルーツでもある「ワンダービートS」について語らせて頂きました!
この記事を読んで、少しでもご興味を持って頂けたら嬉しいです!
今なら、GYAO!で配信(1話目無料、以下有料レンタル)されており、2000〜3000円程度で全話視聴できます。いつまで配信しているか、わかりませんが……
ちょっと見てみようかなと思った方はこちらからどうぞ。
ちなみに、これは広告ではありません。ご安心ください。GYAO!は提携ASPが無いので、こちらの一文の得にもなりません。笑
このどマイナーな「ワンダービートS」のファンの方が増えて、交流できる事を願ってます!
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